一重のツバキは、きれいな花がポトンと落ちますが、八重のツバキはなぜか朽ちても落ちずに、樹上で老残を晒しています。
森敦の短編「かての花」の中に
「・・・『七重八重花は咲けども』という歌は、桜を詠んだものではないが、私は桜の八重は人の手で栽培育成されたもので、『実の一つだになきぞかなしき』ものであると聞かされていた。実ることのない桜は散ることもならず、雨にくだけながらも未練がましく枝に残っているであろう・・・」
というくだりがあります。
きっとツバキも同様、八重は園芸種なので「実ることのない八重ツバキは散ることもならず」なのでしょう。
ツバキと桜は潔く散るのが身上。やはり「花のいのちは短くて」の方が良いですね。